【イクメンブルー】無知のヴェールをかぶってみませんか?

最近の報道では、「イクメンブルー」という育児に参加する男性のうつ状態を問題として取り上げています。「働く哲人」としても、働く問題としてぜひ今回取り上げさせていただきます。

1 イクメン思想台頭の背景

男性が育児に参加することは、今の世の中において肯定されるべき価値観として形成されています。要因としては様々あります。ここでは2点あげます。

まずは価値観の転換ですね。課題はありますが、男女平等の意識が昔よりは高まったことです。

権利意識の高まりは、もちろん政治的な運動、教育的効果もあります。しかしかつての経済成長も大きな要因です。

明治期の「富岡製糸場」というのを聞いたことあるでしょうか。
農村の貧しい家の女性が、出稼ぎに行き、そこでは過酷な労働がなされていました。しかし一方でマクロ的に見ると、女性が工場で働くようになり、経済の担い手になることで社会的な発言力を徐々に拡大することになったという見方もあります。

なぜなら明治時代の次の時代である大正時代には、女性の政治参加を求める運動も発生しました。結局女性の普通選挙権は戦後になるわけですが・・・。
しかし歴史的に見ると近代社会の仕組みを持つ国では、経済の成長が、権利意識の向上、民主化を求めることにつながっています。

次に経済的要因もあります。
かつての賃金体系は、一人の既婚男性には家族分を養うだけの金額がありました。それは高度経済成長という時代の特殊性、また終身雇用体系という日本企業独自の経済体制があった時代だからです。

一方それは経済成長の高まりで確かに権利意識の向上はあったものの、女性は家庭に入るべきという、差別的価値観が根強く前提にあったことは言うまでもありません。

しかし現在の賃金体系は、一人の労働者に一人分の金額を払うことがやっとの経済状態になりました。これではなかなか男一人で家族分を養う、一家の大黒柱思想は崩れました。

そして共働きという新しい家庭の経済モデルが主流になりました。これによって、家族の経済を回していくことになり、男性の育児参加というのも必要な役割分担になったわけです。

共働きによって、保育園の必要性は高まり、「待機児童の問題」も発生しています。しかし一方で育児休暇が取りやすい風土があるのか、というとまだ社会的にはその機運はありません。これは日本の大きな社会問題です。

男性の育児休暇を取りやすい風土を作るために、まずは「イクメン」という名前でファッション化を図ったわけです。確かにそれは世の中に一定の浸透をしました。

2 新しい問題「イクメンブルー」の原因

しかしここでその「イクメンブルー」の課題が発生したわけです。

子育ての先生は、親ですが、残念ながら今のイクメンの親世代の父親は、あまりわからないのが実情ではないでしょうか。
男性の取り巻く環境において、子育てのことを相談することができないというのも原因の一つでしょう。

しかし最大の課題は実はまだ「イクメン」という言葉はあっても、社会全体の理解は追いついていないということでしょう。

会社においてもまだ「育児休暇とってる場合じゃなくて、仕事しろ」また、育児期間中であっても時間短縮勤務にするなどの配慮ができない、こういった考えが根強くあります。

これは確かに精神的にも肉体的にも大きな負担です。イクメンブルーになっても無理はありません。

中には男性とはこうあるべき、という保守的な考えをお持ちの方はいるでしょう。いろんな考え方を持つことは否定されるべきことではないです。しかし個人の考え方とは別にやはり組織の制度、ルールを整備するといった、課題を解決する方向にはいかなければいけません。

では、どうやったら価値観の違う人の社会全体でコンセンサス(同意)をとれるか、これが大きな課題です。

3 一回自分を忘れて考えてみましょう!

今回のご紹介する概念は、「無知のヴェール」です。
概念というよりは、思考実験的な代物ですね。これはアメリカの政治哲学者のロールズが提唱したものです。

▶︎ 無知のヴェール(一回自分の立場とかを忘れて考えること)
自分が男女か、白人か黒人か、体が健康か不自由かなど、自分の置かれた立場がわからないことが前提となる無知のヴェールをみんなでかけた状態で、どのような社会を作れば良いかを考えること。

みんなが無知のヴェールをかぶると、こんな結論を導けるとロールズは考えました。

 ① 基本的自由の原理 
やっぱりみんな不自由な状態は望まないでしょう。

 ② 機会平等の原理
たとえ経済的に格差が生まれても公正な競争の機会はみんなが求めるものでしょう。

 ②’ 格差原理
体が不自由であったり、差別される立場、教育的機会に恵まれない環境であったりする場合では競争に参加するのは困難だから、競争によって生じる格差は最も不遇な人々の生活を改善するために調整しようとみんなが考えるでしょう。

要するに無知のヴェールをかぶると何が起きるかは、みんな最悪を想定して考え、結論を導くということです。なぜなら自分がお金持ちどうかとかはわからないから、最悪を想定するのです。もしかしたら不遇な立場になっているかもしれないからです。

さて、共働きがもはや当たり前の世の中において、男性の育児休暇取得に対する理解や、また育児と仕事を両立し、精神的肉体的に負担にならないよう時間短縮勤務するなどの配慮は、社会正義になるうるでしょうか。

皆さん、無知のヴェールをかぶりましょう。一回自分の立場は忘れましょう。

私自身はまだ独身で、子供いません。だから育児休暇などには直接的には関係ありません。しかしながら、制度への理解、またイクメンへの配慮は、社会で当然に肯定されるべきことであると思います。だって誰でも子供を持つ可能性、イクメンになる可能性はあるからです。(最悪の想定?というのは微妙ですけどね。笑)

みなさん自分の考えを発信することは得意です。そしてそれは良いことです。何度もいうように、男性とはかくあるべし、という保守的な考えを持つことは否定することはできません。ただし、社会制度、会社の組織のルールとして実際に運用する場合はどうしたら良いか。

そんな時一回みなさん無知のヴェールをかぶってみてはどうでしょうか。
部長としてはこう思う。そういう立場からの発言ももちろん大事です。ただそう言った肩書きや、部署を捨てて一度考えてみるとまた新しい視点が生まれるかもしれないです。

「イクメンブルー」に限らず、あらゆる新しい価値観が生まれ、組織内のルール作りは困難があります。LGBT、外国人労働者、人工知能と人間、さまざまなテーマが国という大きな単位でも合意がとりにくいものですが、会社という組織でも話し合わなくてはいけないテーマとなりつつあります。

この価値観が多様化し、変化の早い社会をどう生き、そしてどうみんなで合意をするか、そんなとき一回は無知のヴェールをかぶってはいかがでしょうか。

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